まだ夜が明ける前のこと
ついに星になる日がきた
わたしの身体が静かに消える
そして星になった
これからどこに行き何を見よう
この広い夜空のどこかで
これがさいご・・・
ありがとう
まだ夜が明ける前のこと
ついに星になる日がきた
わたしの身体が静かに消える
そして星になった
これからどこに行き何を見よう
この広い夜空のどこかで
これがさいご・・・
ありがとう
お月さまには誰か住んでいたのでは?
お月様はこたえた
以前は長耳族がいたけど今はいない
地球からのわるいものでよごれてしまったから引っ越ししたんだよ
どこに行ったの?
フフフ・・・お月様は笑った
安全なところなんてあるの?
大丈夫・・・安全なところにいるからね
長耳さんたちに会ってみたかったな~
わたしは汚れた地球を見ながらお月様の青白い光を見つめた
「しかし・・・どうしておまえは大きくならないのだろうね~」魔女ばあちゃんの悩みみたいでした
「シチューしか飲ませないから?・・・いやいや問題はシチューにあったんだ しまった うっかりしてたよ」
魔女ばあちゃんはある日シチューをぶちまけると新しくつくりなおしました
「ごめんよきにろ~ばあちゃんはうっかりしてたよ 薬草の中に魔女には大事な若返りの薬草がはいってたんだよ これはある意味成長を遅らせる働きがあるんだよね 魔女が長生きなのはこの薬草のおかげでもあるんだよ だけど成長盛りのおまえには逆効果ななってしまったんだよね」
やはり原因はそのせいだったんか新しいシチューをのみはじめるとわたしは大きくなりはじめたんだよ
でも魔女ばあちゃんは・・・どんどん年をとりはじめたんだけどね
わたしが大きくなりはじめると「そろそろきにろに魔法のほうきの操縦を教えなくてはね」魔女ばあちゃんは古臭いほうきをとりだしました
「最近はほうきにのる魔女はあまりいないんだけどね わたしもずいぶん乗ってないんだよ でもおまえは外に出るってわけにはいかないしね この家と夜の森の中だけじゃかわいそうだし 夜の空なら危険も少ないだろうし もし人間に見つかっても空までは追いかけられないだろうからね」
魔女ばあちゃんのほうきはなかなかの曲者で乗りこなすのは大変でした それでもなんとか空を飛ぶまでになりわたしは楽しくてたまりませんでした
「いいかいきにろ あまり高くまで飛ぶんじゃないよ 月や星を目指そうなんて思うんじゃないよ このほうきはそんなに丈夫じゃないから壊れてしまいまた空から落ちてしまうよ」
もちろんそんな高く飛ぶなんて怖くてできなかったから心配なかったのですが・・・ただまん丸い月を見るとなんだかどうなってもいいから飛んでいきたい気持ちにはなったけどね
あれ
「きれいなお月様」だね」
「この窓は特別だからとてもきれいにみえるのよ」
地球から見えるお月様はこんなにきれいでないことを二人はちょっとさみしく思いました。
「人間さんがもう少しお空を汚すようなことをしなければいいのに・・・」お月様もうなずくようにきらめきなした。
「ねえゆう太、みんなを連れてお月様に帰ることはできるの?」
「もちろんできるよ・・・ドリームバスの改造は順調ですよ。灰色さんたちも力をかしてくれますからね。ただ・・・」「ただ?」
パタパタともも太が手足を動かしました。「いいこね・・・」ママはそっとからだをさすってやると静かにまた夢の中にはっていきました。
「灰色さんは大昔十人で地球にやってきたけど、三人が火あぶりにされてしまったよね・・・」
「・・・」ママはポトリと涙を落としました。
「二人は人間さんの中で生き延びることができたけど・・・ひとりだけどうしても行方がわからないんだよ。水晶玉にもうつらない、魔法でもさがしだせない・・・でも灰色さんは死なないからきっとどこかに生きているはずなんだけど」
「動物とか植物の中にはいりこんだとしてもわかるものね。あの時代のさまざまなものをさぐってもだめだなんてどういうことかしら」
「ぜったいに探し出してみんなでお月様に帰らなければね」
きらきらとお月様が光を放ち待っているよと言っているようでした。
「灰色さん、どこにいるの?みんな待っていますよ・・・あなたのいるところからはお月様は見えますか?」二人は祈りました・・・
終
二人は黄色い長靴を持って赤ちゃんのところにいきました。
赤ちゃんは気持ちよさそうに眠っています。ママと同じ薄桃色の肌、パパと同じ
長い耳とまあるいしっぽ・・・
「名前をつけようね」パパは長靴の片方をママにわたしました。
二人は指で長靴のふちをなぞりました・・・奇妙な模様が描かれました。
「もも太」同時に声にだすと顔を見合わせて笑いました。
「お月様では今は太をつけない名前がはやっているのにこんちゃんはなぜもも太にしたの?」パパが聞くと「だってゆう太のこどもだもの・・・ゆう太はなぜ?」
「そのほうがわたしたちのこどもらしいからね」パパとママは黄色い長靴をそっとベッドのそばに並べておきmした。
窓からお月様が三人にやさしい光りをなげかけていました。