きにろの昔ばなし・・・つづき

わたしは元気に家の中や森の中を歩き回れるようになったのですが魔女ばあちゃんは「どうしておまえは大きくならないのかねぇ やっぱり食べ物があわないのだろうか・・・薬草をいろいろ入れているから良いように思うんだけど長耳にはあわないのだろうかね・・・」と心配していました

「薬草・・・う~~むこれに問題があるのでは・・・あっしまった 若返りの薬草をいれていたよ・・・ああごめんよきにろ悪いことをしたしまったよ」

「若返りの薬草?」わたしにはわかりません

「これは魔女には大切な薬草なんだよ 魔女が長生きなのはこの薬草のおかげなんだよ だけどおまえのような小さな子には成長をおさえてしまうのかもしれない」そういうと魔女ばちゃんはシチューの鍋をひっくり返して中身を全部捨ててしまいまた新しくつきりなおしました

同じように黒いシチューなんですけどね 味も特にかわりません でもこれを飲みはじめるとわたしはようやく大きくなりはじめました

だけど魔女ばあちゃんはどんどん年をとっていったのです

そうまでしてわたしのことを考えてくれたんです

「魔女ばあちゃん・・・年をとっても大丈夫なの?」わたしは心配でした「なあに大丈夫さ 後で若返りの眠りにはいるからね・・・その前におまえに魔法と空の飛び方をおしえなくちゃいけないよ 少し大きくなったからもういいだろうからね」

魔女ばあちゃんは古いほうきを取り出し「これで空をとぶんだよ これは魔法のほうきだから操縦さえ覚えれば空を自由に飛べるんだよ まあ最近の魔女は使わないけどね わたしもずいぶん乗ってないよ きにろはこの家と夜の森の中にしかいけないものね あとは水晶玉を見ているだけだから これで空を飛べば楽しいだろうと思ってね」といいました

ほうきが飛ぶなんてと思いつつ魔女ばあちゃんのいうとおりほうきにまたがってみました

ほうきは静かに飛びました「ああすご~い」わたしはびっくりしました

「もちろん夜の空しかとんだらだめだよ これなら人間に見つかっても空に逃げればつかまることはないだろうし・・・ただあまり高く飛んではいけないよ ほうきがこわれてしまうからね また落ちたりしたら大変だからね」

わたしは家の中でしばらく練習してから空に飛び出しました

ああなんて楽しいんだろう・・・月が月が近づくよ・・・」

「きにろ~~だめだよそんなに高くまで行っては」魔女ばあちゃんの声が聞こえました

わたしはなんだかそのまま月に向かっていきたい気持ちでいっぱいにんりましたが「パキッ」というほうきの音にびっくりして家のほうに向きをかえもどりました

魔女ばあちゃんが心配そうな顔で迎えてくれました

「魔女ばあちゃんとても楽しいよ ありがとう」

「そうかいよかったね 上手に飛んでいたよ 高さだけは気を付けるんだよ」

魔法も少し教えてくれたんだけどわたしは覚えが悪いので魔女ばあちゃんは簡単なものにしてくれました

 


きにろの昔ばなし

わたしが目を開けると「おやおややっと気が付いたね」と声がしました 最初はなにを言っているのかわからなくて耳をピコピコ動かしました

痛みがツ~ンとしたけれど言葉はわかるようになりました

「怖がらなくてもいいよ わたしは魔女・・・ばあちゃんだよ」「魔女ばあちゃん?」

「お前の名前はなんていうのかい?」「な・ま・え・・?」

さっぱりわかりませんでした

「どこから来たのかはおぼえているかい?」「どこから?来た?」考えてけれど思い出せませんでした

「おやおや頭を打ったせいでなにもかも忘れてしまったのかい・・・まあそのほうが幸せかもしれないね なまじ覚えていて帰りたいと泣かれてもね~~わたしにはどうすることもできないし」

わたしは頭も痛かったしただぼんやりするばかりでした

「おまえは頭から血を流して森の中で倒れていたんだよ ああ昔見たことのある長耳族のこどもだってすぐにわかったよ」

「長耳族?」「うんうん長耳だよ・・・白い血を流して気をうしなっていたんだよ まだほんの小さなこどもだったからてっきり死んでいるかとおもったよ・・・いやいやよく生きていたもんだよ あんな高いところから落ちてきたというのに」

「高いところから?どこから?」

「いや・・・空から落ちてきたとしかわからないよ」

魔女ばあちゃんは小さなわたしを抱いて急いで家に帰り傷口に薬草をぬったそうです

果たしてう薬草が長耳に効くかどうかはわからなかったけれどほかに方法がなかったからね

いつまでも白い血は止まらないし傷口はぱっくりあいたままだし魔女ばあちゃんはあきらめかけていたらしい

でもやっと血が止まり傷口もふさがり・・・そして目をあけたんだって

わたしはこのへんの記憶もはっきりしていなかったんだけど・・・うさ太のおかげで思い出せたんだよ まるでうさ太が魔法をつかったみたいだね

魔女ばあちゃんは「おなかがすいtだろう¥・・・これをお飲み」と黒い飲み物を持ってきました「これは見た目が悪いけれど薬草がいっぱいはいっているからお前のからだにもきっといいだろうよ」

わたしはその見た目にちょっとびっくりしたけれどおなかもすいたいたので飲みました

どうってことのない味でした(このときからわたしはこの黒いシチューだけを飲んでいたんだけどね)

「おまえに名前がないのは困るから・・・黄色い・きいろ・きにろ・・・うんうんこれがいいね お前は今日からきにろだよ」「き・に・ろ・・・」

でもそれかれ何度もこの名前を忘れてしまい「きにろきにろ」と魔女ばあちゃんに呼ばれてもぼんやりしていて「アハハきにろはおまえの名前だよ」と笑われました

ほかのことも魔女ばあちゃんが教えてくれたのですがすぐに忘れてしまいました でも魔女ばあちゃんは根気よく何度でも繰り返し教えてくれました

「頭を強く打ったのだからしかたないことさ そのうりよくなってくるから大丈夫だよ」

やがて家の中を歩き回れるほど元気になりました

すると魔女ばあちゃんはわたしに黒い服を着せ長い帽子をかぶせ「これはとってはいけないよ おまえの姿を隠すものだからね 人間というのは姿かたちが違うというだけでひどいことをするんだよ さすがに火あぶりなんかはなくなったけどね それと明るいときは外に出てはいけないよ このへんは森の中だから人間はめったに来ないだろうけど・・・」

暗くなると魔女ばあちゃんはわたしを連れて森の中に行き薬草になるものを教えてくれました

忘れっぽいわたしに「薬草を覚えるのは悪いけれど毒になるものは本能的にわかるようだねぇ 長耳はきっとそんな力があるんだろうね」と言いました


魔女きにろの過去

「ところで魔女さんにききたいんだが」運転手が言いました

「魔女はやめてきにろって呼んでくれないかい?わたしの名前だよ」

「きにろさんは長耳族だからほんとの魔女ではないですよね でもここはどうみても魔女の家ですよね」

「ここは魔女ばあちゃんの家なんだよ」

「魔女ばあちゃん?」運転手はキョロキョロまわりを見回しました「今は魔女ばあちゃんはいないよ 若返りの眠りにはいってるからね」「しかし・・・魔女の気配がするからどこかで寝ているのではないですか?」「え?でもこの部屋しかないんだよ ベッドはわたしが使っているし」魔女もキョロキョロまわりを見回しました

壁に立てかけてある魔法のホウキがカタカタと小さくゆれました「フムフムなるほど」運転手はうなづき「きにろさんはどうして魔女の家で暮らすようになったんですか?」と聞きました

「ああ・・・それは・・・実はうさ太に頭の傷をなおしてもらったらぼんやりしていた昔のことがはっきり思い出すことができるようになったんだよ それまでは魔女ばあちゃんに魔法を教えてもらい始める前のことは思い出せなかったんだよ でもなぜ魔女ばあちゃんと暮らし始めてのかはわからないよ」

魔女きにろはむか~しむかしのことを話はじめました

きにろが魔女になった奇妙な話ですよ~~~


魔女の気がかり

魔女はバスの窓からうさ太の家がある方向を見ていました

うさ太の家はバリアで囲ってあるので他の人には見えないのですが 魔女にはみえました・・・

「うさ太はかあちゃんになって元気を取り戻したようだけど・・・いつかまた別れの日がやってくるんだよな~かあちゃんに会える喜びとゆう太よ別れなければならない悲しみ かわいそうだなあ・・・なんとかゆう太と一緒に月に行ける方法はないものだろうか」

魔女は明け方眠ったりしないで運転手に会って相談してみようとおもいました

夕ご飯はうさ太にもらったドーナツです これもまたおいしい味です ミルクのかわりに魔女シチューを飲みました

「不思議だね ミルクと同じ味だなんて・・・でも以前は違う味がしたように思うけど・・・」魔女はしらなかったけど運転手がおもちをいれていたんですよね 運転手もうさ太のように不思議な力を持っているようです

夜明け前運転手がやってきました

「おや魔女さん今日は起きているんですね」

「やあ・・・顔を見るのは久しぶりだね」

「おやおやエプロン姿もなかなかですね~」

「ハハハ・・・うさ太のかあちゃんのなんだよ ポケットにお財布がはいっているありがたいものさ」

「そうですか外に出ればお金が欲しくなりますものね・・・あまり無駄使いをしないようにしてくださいね」

魔女はうんうんとうなづきながら「実はね相談があるんだよ」

魔女はうさ太とゆう太の二人で月に行く方法はないものかと相談しました

運転手は腕をくみ「ウ~~ム」とうなりました

「まあそのことはかんがえてみるのもいいね・・・その前に長耳族のことも話さなければね これはうさ太にも話したほうがいいだろうな しかしうさ太もかあちゃんになったんだね~わたしはその瞬間をこの水晶玉で見たんだよ 魔女さんにも見せようとしたんだけど起きなかったからね 残念だったね~アハハ」運転手はおかしそうに笑いました

魔女は「チッ」と舌うちをし運転手をにらみました

あらら・・・なんとしたことでしょうね

これからはしっかりしなければ「うさ太脱出計画」なんてできませんよ 魔女さん!!


もうひとつワクワクが・・・

「うさ太はどうやってお金を稼いでいるの?封筒はりでかい?」魔女は恥じをしのんで聞きました 「お金を稼ぐってなに?」うさ太は反対に聞きました「うさ太はいろんなものを買っているだろ?それってお金がなければだめじゃないか」 「おらはエプロンのポケットにあるお財布のお金を使っているよ かあちゃんもそうしていたよ」

魔女はうさ太がポケットから出した財布を見ました

「いくらお金をもっているんだい?」魔女は少しお金が欲しかったので恥ずかしそうにしながら聞きました

「たぶんなにも入ってないと思うけど・・・」うさ太は財布を取り出し開けてみました「ほらねからっぽだよ」

「エッそれじゃこまるじゃないか」「何か欲しいときはそれを考えながら開けると買ってもいいものならちゃんとお金があるんだよ 買っては」いけないものにはお金が出てこないよ」

魔女はがっかりしました「わたしは少しお金をもらいたかったんだよ わたしはお金を持ってないんだよ もちろん財布もないしね」「そうか・・・ちょっと待ってて」うさ太はそういうと棚の奥に手を伸ばし白いエプロンを出しました

「これはかあちゃんのエプロンだよ ちょっとつけてみて」

うさ太がエプロンを差し出すと魔女は「かあちゃんのエプロンなのに・・・わたしなんかが・・・」「いいよ エプロンをしてポケットに手をいれると・・・たぶんお財布が・・・」

うさ太は自信がなさそうにいいました

魔女はエプロンをつけポケットに恐る恐る手をいれました

オッ~~~~なんと魔女が財布を取り出しましたよ

「やっぱりかあちゃんの財布だ」うさ太はニコニコしました

「・・・そうだね・・・バスのお金ってかんがえてよ」うさ太が言うと魔女はうなずいて宙を見つめました

「お財布を開けてみて」うさ太がいうと魔女はお財布を開けてみました「あるよ お金がはいっているよ」「それは帰りのバスに乗る時払うと」いいよ 今度はほかのことを考えて開けてみて」魔女は考えました そして開けてみました「からっぽだよ」「それは買えないってことだよ 高すぎるか買ってはいけないものだよ」「そうか・・・」魔女はちょっとがっかりしました 実は掃除機って考えてみたのです

「きにろさんそのエプロンを使えばいいよ」「でもこれはかあちゃんの・・・」魔女はお財布が欲しかったけど大事なエプロンだと思うと申し訳ないt思ってしまいました

「平気だよ きにろさんが使ってくれるんだもの・・・かあちゃんだってどんなにおらが世話になったかわかっているだろうしね」うさ太はさみしいときカゲのかあちゃんを魔法で出してもらったことを思いました

「・・・申し訳ないけど・・・つかわしてもらうよ・・・ほんとに助かるよ お金がなくて困っていたからね」「うん使ってね」うさ太は魔女のエプロン姿がおかしくて笑いをこらえていました 魔女はそうとも知らずエプロンをうれしそうにさわっていました

魔女はほんとうにうれしかったのです 財布だけでなくエプロンまで手に入れたからです

魔女のへたな魔法よりうさ太のまわりには魔法以上の不思議なものがあるんですね~~

魔女は自分の名前を書いた黄色い長靴をはいて白いエプロンをしてバスに乗って帰って行きました

「またきてね~~」うさ太はゆう太を抱き窓から手をふっていました

「かあちゃん・・・」うさ太は涙ぐみました ゆう太がパタパタと手足を動かし「アウ・・アウ・・・」と言うと「そうだね おらはもうかあちゃんなんだよね ごめんごめんかあちゃんはもう泣かないよ」

うさ太 魔女新しい日々がはじまったのですね 幸せでありますように みなさんも願ってくださいね